2016.09/05(Mon)

【砂の花嫁】 

 夜

あるところに男がいた
身をかためたくなったが理想の女がいない
そこで自分で花嫁をつくることにした

砂を沢山集めて、てんてん、とんとん女の形のものをたたいてつくった

ほどなく輝くような美しい女ができあがった
しかし彼が触れるやいなや、閃光をはなって粉々に砕け散った

男はもう一度 てんてん、とんとん 砂で女をつくった

今度の女は色っぽかった
スモモのようなつるつるの肌 ぷりぷり大きな胸と臀
しかし他の男と仲良くなり、おしりをふりふり出て行った

男はもう一度 てんてん、とんとん そして

3人目の女はまさに彼の理想だった
黒曜石の肌 上品で優しく受容的
しかし微笑むばかりで 岩のように重くかたくびくとも動かない


男はすっかり絶望した 悲しかった 胸が痛くてたまらなかった

痛む胸をなんとかしようと、墓場へおもむいた
(アメジストの空 砂糖菓子の道 レエスの墓石)

紫色の空の下 男は自ら胸を切り裂いて心臓を取り出した
(これで痛みがなくなるのだろう)

男の心臓は 痛んで痛んでかわいそうだったが 宝石のように紅く輝いた

それを見た男は 
「どうして女たちはこんなにも美しい私の心をわからないのか」
そう思ってもう一度悲しくなった


砂糖菓子の地面の上に置かれた心臓はきらきらと美しく
そこから芽が出て、やがて大きな黒い木になった

木はやがて、そこを通りかかる多くの旅人の癒しどころとなった
人々は木陰で疲れた身体を休め、時々紅い実をもいで食べた

大きな黒い木は 熱い日差し 寒い風 冷たい雨を除け 旅人を守った
紅い実をたくさん実らせて おしげもなく 地上に落とした
無言でただただ与え続けた


それを見ていると男の胸になんとも言えない感情がうっすらとわいてきた
(なんとも言えない、のは今までに男が一度も感じたことのないものだったから)


よく目をこらすと、男を見上げて人々が笑っているのがみえた

…そう、いつのまにか男自身も大きな木になっていた


人々は紅い実をほおばりながら 男を見上げてこう言った
「ああ神様、とても快適でしあわせです。感謝します」

それを見ていると男の胸になんとも言えない感情がわいてきた
なんとも言えない、のは今までに男が一度も感じたことのないものだったから
しかしなんとなく あたたかい と思った


2本の木はいつまでも いつまでも 人々に幸せを与え続けた
アメジストの空の下 紅い実はルビーのようにきらきらと輝いた

天の国では神様が微笑みながらその様子をみていた
そばにいた天使が うつくしいですこと とため息をついたのが 午後




…これはある音楽を聴いているときに マユリの頭の中に浮かんだイメージです。
話はちゃんと創作したものではないので落ちはないのですが
とても美しいイメージで、ストーリー性もあるのでUPしてみました。


佳い演奏者とはおそらくその人その存在が神様の楽器であり 
耳に音を与えるだけでなく、魂をゆさぶる音なき音を奏で
聴く者を光の高みに導き上げるのでしょう

もしわたしの耳が聴こえなくなっても
この曲のある場所にいれば必ず 魂ずくで舞い上がることができる気がします


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