2010.10/19(Tue)

なぜ、叱ってくれなかったのですか 

むかしむかし ある親子がいました

幼い息子が よそ様からちょっとしたものを盗み 母のもとへもっていくと

母親は そのあたまをなで えらいねえ といってほめました


また べつの日 息子がなにかを盗み 母のもとへもっていくと

また 母親は そのあたまをなで えらいねえ といってほめました


そうして 息子は 盗みをくりかえすようになり 母親はそのたびにほめてやりました


息子は盗みをくりかえしながら 成長し 
盗むものも だんだんと高価なものになり
盗み方も「ちょっと盗った」とはいえないほどに悪くなってきました


しかし 母親は決して 息子を 叱ろうとはしませんでした


大人になった息子は ついに強盗の罪でつかまりました
盗みをくりかえした数が多すぎたのと 盗み方も悪かったので 死刑がきめられました


処刑の当日 両手をしばられ 処刑台に向かう息子のもとへ
見物の群衆のなかからひとりの女性がとびだしてきました

それは すっかり年老いた母親です

母親はいいました


わたしがこんなに可愛がって育てたのに なんと親不孝な息子なんだ




すると両手をしばられた息子は母親にかけより その耳をくいちぎって 言ったものです


「おかあさん、なぜあなたはわたしを叱ってくれなかったのです
一番最初のあのとき、あたまをなでるべきでなく ひっぱたくべきだったのです」





……これはずっと昔、小学生の時に読んだ 古い古い外国の童話です



当時のわたしの心には大変強くひびきましたが それにはとても解りやすい理由がありました

それは校内での暴力。男子児童から女子児童への暴力でした

現在のことはわかりませんが
わたしが子どもの頃は 女の子に対して暴力をふるう男の子たちはたくさんいました。

たたく、ける、暴言を吐く といったことはもちろん
大人の痴漢と同じような性暴力をふるう場合もあり 
そのひどさは 今思い出しても心が重くなるほどです。


しかし 親や教師たちは決してそれを叱ろうとはしませんでした。

むしろ 男らしい外向性や性の発露が表出されていて 順調に成長している証拠だ などと言い
逆に  それを受け入れてあげるのが賢い女の子なんだ と被害女子児童に訓戒をたれたりしました。


男の子たちはのびのびと暴力を楽しみました。
男の子同士のけんかなら 叱られることもあるけれど 
女の子に対してなら大丈夫。まず叱られず罰されないし
逆に女の子が叱られているのを見て、自分たちの優勢をちゃんと理解しました。


男の子なんだからいいじゃないか 男の子なんだから


女の子を悲しませる行為は自分たちの気分がよくなるならゆるされる…と彼らが学んだのを
わたしは自分の目の届く範囲で確認し

大人たちの言葉や当時のメディアを通じて得られる色々な情報や
世の中の雰囲気から この考え方は非常に一般的に支持されているものではないかと感じ

そして、彼らはいつ叱られるのだろう 叱られなければ彼らの「楽しみ」は
新聞に載るような暴力になってしまうのではないだろうか…と思うようになっていたのでした。





東京都港区で昨年8月、耳かき店従業員江尻美保さん=当時(21)=と祖母の鈴木芳江さん=同(78)=を殺害したとして、殺人罪などに問われた元会社員林貢二被告(42)の裁判員裁判初公判が19日、東京地裁(若園敦雄裁判長)である
(Yahooニュースより抜粋)


犯人はわたしより2歳年下です。 
自分と年齢の近い男性が自分の欲求に反するという理由で女性に暴力をふるうのを見聞きするたび
私の心は小学生のあのころと同じように重く重くなるのでした。


この犯人に耳をくいちぎられるべきなのは誰かしら…


…あの童話を読むときには「母親」をそのまま生物的母と解釈してはならないでしょう。

あの「母親」は 両親であり、PTAであり、学校であり、そのような教育者を世に放った機関であり、その機関の上部機関・そのまた上の…、男女の在り方をドラマや小説・音楽などに載せて流すメディアであり…数えきれないほどの何かの集まり。

「社会」なのです。


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